修理実績

オンプレ電子カルテシステムのサーバー故障の調査事例

古いパソコン修理
The following two tabs change content below.

森田起也@パソコン修理の鉄人・(株)日本ピーシーエキスパート代表

1995年シリコンバレーでパソコンと出会い、プラント制御、カーナビの開発・設計を経て2003年に独立。産業用PC修理延命事業を開始。現在はパソコン修理の鉄人として、千葉県柏市にて、日本全国の生産現場の旧型PC修理・延命を行っております!趣味はトライアスロンでそっちでも鉄人です!!

【ご依頼者様】神奈川県中郡二宮町のお客様

今回は、神奈川県中郡二宮町のお客様から、Fujitsu製のサーバーPC「PRIMERGY TX120 S3 PS-130-D3049/PYT12PT2S」の修理依頼をいただきました。このモデルは企業向けのサーバーPCで、長期間にわたり安定した稼働を求められるハードウェアです。

修理依頼の背景と問題点

お客様のご要望としては、すでにクラウド型の電子カルテシステムを導入しているものの、過去のカルテデータにアクセスできず、業務に支障が出ているとのことでした。今回の修理対象であるサーバーPCはクラッシュしており、RAIDの崩壊によってHDD内のデータが参照できない状態でした。そこで、私たちに復旧と延命の依頼をいただきました。

こちらが修理対象のFujitsu PRIMERGY TX120 S3です。外観には大きな損傷は見られませんが、経年劣化が進んでいるため、内部の点検と修理が必要です。

PCの背面です。サーバーPCとして利用されているため、多数のポートが搭載されており、各種デバイスやネットワークと接続されています。特に業務用システムでは、こうした接続ポートの多様性が重要です。

お客様から送付いただいた添付物一式です。この中でも、特にHDDには過去の電子カルテデータが保存されているため、データの復旧が最優先事項となります。

内部の確認とホコリ除去作業

PCを開いて内部を確認したところ、長期間の使用によって、かなりのホコリが堆積していることが分かりました。特に、サーバーPCは長時間連続稼働するため、冷却システムが劣化すると内部の温度が上昇し、故障のリスクが高まります。

前面パネルを外し、HDDへのアクセスを確認しました。このサーバーPCには、SAS規格の300GB HDDが3台搭載されていますが、HDD周辺にもホコリが目立ち、冷却効果を大きく低下させています。

こちらのHDDは、Seagate製のST300MM0006で、流通も確認できています。3台とも健康状態は外部から参照できないモデルですが、これらのHDDのデータ復旧が非常に重要です。

内部全体にホコリが堆積していることが確認できました。これにより、冷却効率が低下しており、PC全体の安定動作に悪影響を及ぼしている可能性があります。

こちらは前面側のホコリの状態です。ホコリが多く溜まっているため、熱がこもりやすくなり、HDDやCPUの寿命が縮まっている恐れがあります。

背面側から見た内部の状態です。こちらもホコリが堆積しており、PC全体のパフォーマンスに大きな影響を与えていることがわかります。

ホコリを丁寧に除去し、内部の温度管理を改善しました。特に冷却ファン周りのホコリが冷却効率を大幅に低下させていたため、この部分の清掃は重要です。

ホコリ除去後の状態です。これにより、冷却性能が回復し、内部のパフォーマンスも安定します。

HDDのクローン作成と仮想化作業

次に、HDDのクローン作成を行い、仮想環境でのシステム復元を試みました。RAID構成が崩壊していたため、HDDを個別にクローンして、仮想環境でデータの復旧を進めます。

左側スロットに搭載されていたHDDのクローンを作成しました。データの損傷を防ぐため、クローン作成は重要なステップです。

BIOS上でのテストも行いましたが、途中でフリーズする現象が確認されました。これは機種固有の挙動か、またはハードウェアの不調によるものか、この時点では判断が困難でした。

BIOSの設定を見ると、日付がデフォルトになっており、ボタン電池の残量が切れていたため、設定がリセットされていました。これもシステム不調の原因の一つです。

右側スロットにあるHDDのクローン作成を行い、データの安全なバックアップを取得しました。

その後、BIOS上での高負荷テストを実施し、システムの安定性を確認しました。問題なくテストを通過しました。

メモリテストも実施し、システムの安定性を確認しました。これにより、メモリに問題がないことが判明しました。

添付いただいた外付けHDDも調査し、クローンを作成しました。外付けHDDには物理障害の兆候があり、異音とともに健康状態も「注意」となっていました。

外付けHDDのクローン作成が完了しました。異音や物理障害が発生していたため、データの復旧作業には申し訳ありません、メッセージが途中で途切れてしまいました。続きを出力いたします。

中央スロットに搭載されていたHDDのクローン作成も完了しました。これにより、RAID崩壊によるデータ損失のリスクを最小限に抑えることができました。

電源は富士通製の独自規格です。この電源は劣化が進んでいるため、オーバーホールが必要です。

電源内部の状態です。特に電解コンデンサが劣化しており、電圧の不安定さが発生する恐れがあります。オーバーホールを行うことで、電源供給の安定性が向上します。

こちらはメモリの状態です。4GBのメモリが2枚搭載されており、合計8GBのメモリを確認しました。システムの安定動作には十分な容量です。

マザーボードはPRIMERGY TX120 S3のものです。流通が確認されているため、部品交換が可能ですが、劣化が進んでいるためオーバーホールが推奨されます。

SASインターフェースボードは流通が確認されていないため、代替品の調達が難しい状況です。

仮想環境においてクローンHDDからWindowsを起動しました。これにより、データが無事に復旧され、システムが正常に動作することを確認しました。

外付けHDDに関しても、クローンを作成し、仮想環境でのデータ復旧を試みました。

外付けHDDは異音が発生しており、健康状態も「注意」となっていたため、早急な対応が必要でした。

仮想化および修理プランの提案

お客様には、以下の3つのプランを提案しました:

  • 1. 仮想化プラン:PCのシステム全体を仮想化し、新しいハードウェア上で運用を再開。
  • 2. HDD交換およびメインボード・電源ユニットのオーバーホール修理+延命プラン:現在のハードウェアを修理し、延命を図る。
  • 3. HDD交換のみの応急修理プラン:一時的にシステムを復旧し、後日さらなる修理を検討。

お客様は今後も長期間の使用を希望されていたため、仮想化プランまたは修理+延命プランをご検討いただくこととなりました。

イベントログを確認したところ、2022年7月ごろに意図しないシャットダウンが複数回発生していたことが判明しました。これがシステムの不調を引き起こした可能性があります。

結論と今後の対応

最終的にお客様は、仮想化プランを採用し、旧型ハードウェアから新しい仮想環境へ移行することを決定されました。これにより、過去の電子カルテデータへのアクセスが回復し、今後の業務に支障が出ることなく運用を再開できるようになりました。

このように、古いサーバーPCであっても、適切な技術を用いることで延命・修理が可能です。特に、システムの仮想化は、ハードウェアの老朽化に伴うリスクを最小限に抑え、安定した運用をサポートします。

システムの修理やデータ復旧でお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。