修理実績

生産停止の危機!データ復旧成功率30%の壁を越え、プレカットCAD/CAM装置を復活させたUnix搭載PC延命術

修理の鉄人実績ブログ
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森田起也@パソコン修理の鉄人・(株)日本ピーシーエキスパート代表

1995年シリコンバレーでパソコンと出会い、プラント制御、カーナビの開発・設計を経て2003年に独立。産業用PC修理延命事業を開始。現在はパソコン修理の鉄人として、千葉県柏市にて、日本全国の生産現場の旧型PC修理・延命を行っております!趣味はトライアスロンでそっちでも鉄人です!!

「この設備が止まったら、うちの会社は終わる…」全国の製造現場を預かる経営者・設備管理責任者の皆様、他人事ではないとお感じではないでしょうか。

ある日突然、生産ラインの心臓部が沈黙する。メーカーは「サポート終了です」の一言。更新には数千万円の見積もり。それは、企業の存続そのものを揺るがす、まさに経営の危機です。

先日、新潟県で木材加工業を営むお客様から、まさにその危機的状況に陥ったと緊急のご連絡をいただきました。業務の要であるプレカットCAD/CAM装置が、制御用のPC(NEC EWS4800/410AD)の不調で完全に停止してしまったという、切実なご相談でした。

この記事では、OSのディスクもマニュアルも存在しない、データ復旧成功率30%という絶望的な状況から、いかにして弊社の技術が生産ラインを救い、お客様の事業継続に貢献したか、その一部始終をご紹介します。これは、貴社の未来にも起こりうる物語です。

お客様からのSOS「プレカットCAD/CAMが完全停止!ディスクもマニュアルも無い状況で、あと5年は使いたい」

ご連絡をいただいたお客様の状況は、まさに八方塞がりでした。日々の業務に不可欠なプレカットCAD/CAM装置が、起動に時間がかかるようになった末、ついに完全に起動しなくなったとのこと。これにより、木材加工の生産ラインは完全に停止してしまいました。

さらに問題を深刻にしていたのは、制御PCのOSが特殊なUnixであり、そのインストールディスクや専用CAD/CAMソフトのメディア、マニュアル類が一切残っていないという事実です。これは、PCが物理的に直ったとしても、魂であるソフトウェアを復活させることができないことを意味します。「高額な設備更新は避けたい。このPCを何とかして、最低でもあと5年は使い続けたい」…それは、生産現場からの悲痛な叫びでした。

EWS4800/410ADの写真

【診断対象PC:NEC EWS4800/410AD】
こちらが、お客様の生産ラインの運命を握るNEC製ワークステーションです。20年以上の時を経てなお、現場の第一線で稼働してきた歴戦の勇士。しかし、その堅牢な筐体の内部では、確実に経年劣化が進行していました。

EWS4800/410ADの写真

【PC背面】
SCSIポートやシリアルポートなど、今では見かけなくなったインターフェースが並びます。これらのポートに接続される機器やケーブルも含め、システム全体が一体となって初めて価値を生むのが、こうした旧型産業用PCの特徴です。

弊社の精密診断が暴いた「絶望的な現実」と「一条の光」

早速PCをお預かりし、弊社の技術者が3万件以上の実績に裏打ちされた精密診断を開始しました。その結果は、お客様の不安を裏付ける、極めて厳しいものでした。

EWS4800/410ADの写真

【PC内部の初期確認】
内部を開封し、目視でコンデンサの破裂や液漏れ、基板の焼損など、明らかな物理破損がないかを確認します。一見して大きな破損は無くとも、問題は目に見えない電子部品の寿命や、データの記録媒体であるHDDの内部で起きているのです。

EWS4800/410ADの写真

【原因の核心:物理障害を起こしたSCSI HDD】
搭載されていたのはSeagate製ST34573N、今では入手自体が困難な50ピンSCSI規格のHDDです。この中に、お客様の事業の根幹をなすCAD/CAMのデータと、専用にカスタマイズされたUnix OSが全て記録されています。まさに企業の「魂」そのものです。

EWS4800/410ADの写真

【物理障害の症状】
通電すると「ウィーン」というモーターの回転音はするものの、ヘッドがデータを読み書きする「カリカリ」という音が全くしません。これは、データを読み取る磁気ヘッドがディスク上で正常に動作できなくなっている「重度物理障害」の典型的な症状。下手に通電を続けるだけで、データを記録したプラッタ(円盤)に傷が付き、復旧不可能な状態に陥る極めて危険な兆候です。

EWS4800/410ADの写真

【診断の確定】
弊社の検証用機材(SCSI デュプリケーター)に接続しても、結果は同じでした。複数の環境で試すことで、PC本体との相性問題ではなく、HDD自体の物理的な故障であると確定診断します。この正確な原因の切り分けこそが、無駄な時間とコストを省き、データ復旧という次の最善手へと繋がるのです。

この時点で、お客様のデータおよびシステムを完璧なままで取り出せる可能性は、我々の経験上30%以下。しかし、諦めるわけにはいきません。同時に、HDD以外の部分も診断を進めました。

EWS4800/410ADの写真

【PC本体の生存確認】
問題のHDDを取り外した状態で起動テストを行うと、BIOS(基本的な制御プログラム)は正常に起動しました。お客様からお送りいただいた専用のキーボードとマウスを接続することで、POST(自己診断)画面もクリア。これは、マザーボードやCPU、メモリといったPCの基本機能がまだ生きていることを示す「一条の光」でした。

EWS4800/410ADの写真

【見えない時限爆弾:電源ユニットの劣化】
しかし、電源ユニット内部は、外観に異常がなくとも電子部品の劣化が深刻に進行していました。特に電解コンデンサは、経年により静電容量が低下する「容量抜け」を起こします。これが電圧の不安定さを招き、システム全体のフリーズや、最終的にはHDDの故障を引き起こす根源的な原因となるのです。

経営判断を支援する、2つの未来への選択肢

診断結果は明確でした。①HDDの深刻な物理障害、そして②PC本体全体が寿命末期の「時限爆弾」状態であること。この厳しい現実を踏まえ、弊社は単なる修理屋としてではなく、お客様の事業継続を支援する経営コンサルタントの視点から、2つのプランを提示しました。

  • プランA【修理+延命プラン(推奨)】:まず、弊社の管理下で専門機関と連携し、成功率30%の壁に挑むデータサルベージを実施。成功後、診断で判明した全ての劣化部品(電源ユニット、メインボードのコンデンサ、冷却ファン、RTCチップ等)を徹底的にオーバーホールし、ストレージは高信頼性の産業用部品へ換装。「リスクを根絶し、今後5年間の安定稼働という未来を買う」ための、弊社が最も推奨する投資です。
  • プランB【最低限の修理プラン】:データサルベージと、起動に不可欠なストレージ交換のみを行う、「業務停止状態からの緊急脱出」を最優先する応急処置。ただし、PC本体の時限爆弾は抱えたままとなり、短期的な再発リスクが残ります。

この二つの道筋と、それに伴うリスクとコストを明確に提示し、お客様の経営判断を全力でサポートすること。それこそが弊社の使命です。

復旧成功率30%の壁を突破!生産ライン復活への軌跡

お客様は、今後の事業継続性を最重要視され、弊社の推奨する「修理+延命プラン」をご選択されました。

まず、最大の関門であったデータサルベージ。UFS(Unix File System)という特殊なファイルシステムでしたが、弊社の技術管理と専門機関との強力な連携により、お客様の貴重なデータとプログラムを、ほぼ100%の形で救出することに成功しました。

EWS4800/410ADの写真

【データ復旧完了の報告】
外部の専門機関から、復旧したデータと共に送られてきたクローンHDD。ここから、ハードウェアの延命作業と並行して、ソフトウェアの魂を新しい身体(ストレージ)に吹き込む作業が始まります。

データ復旧の成功を受け、PC本体の延命作業を本格化。電源ユニットとメインボードの全コンデンサを高信頼性の日本製105℃品に交換、冷却ファンも全て新品に交換し、徹底的なオーバーホールを施しました。そして、復旧したデータを新しい産業用ストレージに完全に複製し、システムを組み上げました。

EWS4800/410ADの写真

【魂が再び宿った瞬間】
延命処置を施したPCに、復旧したデータを載せた新ストレージを接続し、起動。見事にUnixのログイン画面が表示されました。この後、お客様と連携してパスワードの問題をクリアし、使い慣れたCAD/CAMソフトが正常に動作することを最終確認。プレカットCAD/CAM装置は、完全に息を吹き返したのです。

結論:修理延命は、未来への戦略的投資である

弊社の「修理+延命」プランにより、お客様の生産ラインは見事に復活。何よりも、数千万円規模の突発的な設備投資を回避し、その予算をより戦略的な分野へ振り向けることが可能になりました。

弊社が行っているのは、単なる部品交換ではありません。3万件以上の実績と、ハード・ソフト・システムに精通した技術者の総合力をもって、お客様の資産を科学的根拠に基づいて延命させ、企業の事業継続に貢献する「経営コンサルティング」であると自負しております。

貴社の工場で、今日も静かに稼働している古いPC。それは、いつ事業を停止させるか分からないリスクそのものかもしれません。その「時限爆弾」が爆発する前に、予防保全という未来への投資をご検討ください。弊社は、そのための最適なソリューションを、必ずご提案いたします。